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注:ダイアグラムをクリックすると,それを生成するためのWolfram言語コードが得られます.ここでニューラルネットを訓練するために使われているWolfram言語コードも入手可能です(使用にはGPUが必要です).
AI(人工知能)は科学の問題を解けるか?
AI(人工知能)は科学の問題を解けるか?
将来的にはAIで何でもできるようになるのではないか
将来的にはAIで何でもできるようになるのではないか
特にAIの最近の驚くべき成功を受けて,将来的にはAIが「何でもできる」ようになる,あるいは少なくとも現在我々が行っていることはすべてできるようになるのだという考えがかなり広まっています.では科学はどうでしょうか.数世紀に渡って我々人間は,徐々に進歩を遂げ,現在基本的に我々の文明における唯一かつ最大の知的建造物となるものを少しずつ構築してきました.しかし我々のあらゆる努力にもかかわらず,まだ数多くの科学的問題の答は見付かっていません.では,AIの登場によって,これらの未解決の問題がすべて解かれてしまうのでしょうか.
この究極の質問に対する答は,必然的にそして断固として「いいえ」です.しかし,AIが科学を進歩させる重要な助けとなることは間違いありません.非常に実用的なレベルにおいては,例えばLLM(大規模言語モデル)は,我々が長年に渡ってWolfram言語で築いてきた計算機能に新たな種類の言語インターフェースを提供します.そしてLLMは「確立された科学の見識」を利用して,しばしば科学的作業における「確立された答」や「確立された次のステップ」を記入する,非常に高レベルの「自動補完」機能を提供します.
しかし私はここで,科学におけるAIについてのより奥深い質問について考えてみたいと思います.3世紀前に科学は数学を使って世界を表現するというアイディアによって大きく変わりました.現在我々は,世界を根本的に計算で表現することへの大きな変換期の真っ只中にあります(そして世界を計算で表現することこそがWolfram言語という我々の計算言語が目指すものです).それでは,AIはどの程度のものなのでしょうか.AIは基本的に既存のメソッドにアクセスするための実用的なツールであると見なすべきでしょうか.それともAIは科学に何か根本的に新しいことを提供するものであると考えるべきでしょうか.
私はここで,AIが科学分野でできるあるいはできないと予想されることを探り,評価しようと思います.数多くの具体的な例について考えますが,例は何が起っているか(あるいは起っていないか)の核心が分かりやすいように簡略してあります.ここまで見てきたことに基づいて,直感や予想について考えます.その後,何が可能で何が不可能であるかについての理論的,そしてある意味で哲学的な土台となるものについて考えます.
ここで「AI」とは何を意味するのでしょうか.過去には,複雑な計算を必要とするものは何でも「AI」であると見なされることも多く,その場合には,例えば,我々がWolfram言語という計算言語で長年行ってきたことも,私が計算宇宙内で行ってきた簡単なプログラムによる「ルール学」の研究もすべて 「AI」と見なすことができます.しかしながらここでは大部分において,より狭い定義を採用し,AIとは,与えられた例によって徐々に訓練された機械学習に基づく(そして通常ニューラルネットワークによって実装される)ものであるとします.また私がしばしば付け加えるのは,訓練に使う例は,人間が生成した科学的なテキスト等の大規模なコーパスか,世界で起ることについての実際の体験のコーパスを含むということ,つまり,言い換えれば,AIは「未加工の学習機械」であると同時に,人間が調整した知識の多くからすでに学んだ何かであるということです.
AIが何を意味するのかについて話したので,今度は科学とは何か,「科学を行う」とは何を意味するかについて考えましょう.究極的には,「世の中にある」もの(そして通常自然界にあるもの)を取って,我々が考える,あるいは理論付けることができるものにそれらを結び付けたり説明したりする方法を考えることすべてを指します.しかし,実際に科学を行うためにはいくつかのかなり異なった,よく使われる「ワークフロー」が存在します.予測を中心とするワークフローは,観察された振舞いから何が起るかを予測したり,システムがどのように動作するかを明示的に示すことができるモデルを見付けたり,既存の理論から具体的に予測される結果を見極めたりします.その他のワークフローはむしろ説明についてのもので,ある振舞いから人間が理解できる説明を導き出したり,さまざまなシステムやモデルの間の類似性を見付けたりします.ものを作成するためのワークフローもあります.これは特定の特性を持つ何かを発見したり,何か「おもしろい」ものを発見したりします.
以下では,これらのワークフローについて,AIが変える(あるいは情報を与える)ことができるかどうかを詳しく見ていきます.しかしその前に,「科学を解く」ことを試みる際に関わってくること,計算の不可約性の現象について考える必要があります.
計算の不可約性のハードリミット
計算の不可約性のハードリミット
過去にうまくいったこと
過去にうまくいったこと
AIは次に起ることが予測できるのか
AIは次に起ることが予測できるのか
計算過程の予測
計算過程の予測
計算の可約性を特定する
計算の可約性を特定する
人間以外の世界におけるAI
人間以外の世界におけるAI
方程式をAIで解く
方程式をAIで解く
AIを多重計算に使う
AIを多重計算に使う
システム空間の探究
システム空間の探究
物語としての科学
物語としての科学
おもしろいことを見付ける
おもしろいことを見付ける
「厳密な科学」を越えるもの
「厳密な科学」を越えるもの
それでは... AIは科学の問題が解けるのでしょうか.
それでは... AIは科学の問題が解けるのでしょうか.
注記
注記